Classici giapponesi con furigana
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めばえ
芽生
宮本 百合子
Leggi 芽生 (めばえ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N3. Tocca una parola per il significato.
N3 · intermedio · kanji e kana moderni · 40.924 caratteri · 81 schermate
撥をすてて爪弾をして居ると、何となくその音がこないだ見た紙治の科白の様にきこえる。どうしてあの時はあんな風に酔わされたのかしら、涙が出て――涙が出て恥かしいほどだったが、涙のこぼれる方がまだ好いんだ。三味線をほっぽり出して壁によっかかってあの時のうれしかった事を思い出す。あのなよなよとした肩っつき、頬かむりの下からのぞいた鬚の濃さ、物思わしげな声――それだけ思っても頬が熱くなって来る。
あの通りの着物を作ってしっとりと着て見たらさぞうれしいだろうが――あの時はまるで自分が紙治になって居た、傍で見て居たら、キット一緒に首を動かしたりうなだれたりして居たんだろう。も一遍あんな気持になって見たいナ、若い娘がいい人の事を思い出した時みたいにトキントキンとどうきが高くなって眼がかすむ様になって居る。「いいなあ」我知らずこんな事を口走ってしまった。下でおっかさんが「お昼だよ」って云ってるけども行きたくなんかありゃあしない、ちっとも。こんないい気持でこんなおだやかな心でこのまんま死んじまいたい様だ。
何を考えるともなく目をつぶってうっとりとして居た。何にもする事もなし、浜町にでも行って焼絵を書いてでも来ようか、と思い立ったんでスケッチブックをつっこんでフラリと飛び出すとおっかさんが何かしきりに云ってなさる。