Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

Leggi 菊千代抄 (きくちよしょう) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.178 caratteri · 72 schermate

Aozora Bunko

その席には給仕のために少年の小姓を二人、それと乳母の松尾しか近よせなかった。またどんな急用があっても取次ぎは禁じられていた。……まだ菊千代が乳母の手に抱かれているじぶんから、貞良はしきりに酒を飲ませた。三つ四つになると膳を並べさせ、「さあ若、ひとつまいろう」などとまじめな顔で盃を持たせたりした。

母にはごくたまにしか会わなかった。一年に三回か五回くらい、必要のある式日に上屋敷へゆくので、そのとき会うわけであるが、菊千代はあまり母が好きではなかった。髪毛が重たそうにみえるほど多く、頬がこけて、あとで聞くと病身だったというが、いつも沈んだ顔つきで、菊千代をいつも可愛がって呉れるようなことはなかった。むしろ菊千代の姿を見るのがつらいような、眼をそむけたいといったふうなようすさえ感じられた。

――そうだ、母にはつらかったのだ。

ずっとのちになってそう気づいたが、当時はなにも知らなかったので、こちらでもあまえる気持などは起こらず、挨拶をしてほんの暫くいるだけでも気づまりなくらいだった。

自分のからだに異常なところがあるということを、初めて知ったのは六歳の夏であった。