Classici giapponesi con furigana
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おちばのとなり
落葉の隣り
山本 周五郎
Leggi 落葉の隣り (おちばのとなり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.877 caratteri · 57 schermate
神田川の河岸にあるその居酒屋は、小さくて汚ないうえに、荷揚げ人足や船頭など、川筋で働く人たちがおもな客だから、「指定」の職人などはもちろん、近所の者とかち合う心配はなかった。店は二十人もはいれるだろうか、暗くて湿っぽい土間に長い飯台が二つ、それを囲んで空樽に薄い蒲団を置いたものが並べてある。――十五日の黄昏で、かなり混んでいる店の、いちばん隅に席をみつけ、繁次は壁へくっつきそうな恰好で、肩をすぼめながら腰を掛けた。
年は二十ちょっとぐらいだろうが、世帯崩れのような、ひどく老けてみえる女が注文を聞きに来て、おや、指定さんのにいさんじゃないの、と驚いたように云った。繁次は逃げだしたくなったが、やっとがまんして酒と肴を頼んだ。
「だらしがねえな」と繁次は口の中で呟いた、「そんなことわかってたじゃねえか、忘れちまえ」
佃煮と目刺の焼いたのと、甘煮などが並び、繁次は二杯まで眼をつむって飲んだ。これまでとは違って、苦くもなく、匂いも鼻につかなかった。
忘れちまえ、と心の中で繰り返し、幾たびもぎゅっと眼をつむって頭を振った。だが、眼の奥に残った印象は深く強烈で、まるで刻みつけでもしたように、どうしても打ち消すことができなかった。