Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おちばのとなり

落葉の隣り

山本 周五郎

Leggi 落葉の隣り (おちばのとなり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.877 caratteri · 57 schermate

Aozora Bunko

「怒らして悪かった」と起きあがりながら参吉が云った、「ごめんよ、繁ちゃん」

「たいへんだ、血が出てる」繁次は蒼くなった、「おれかあちゃんを呼んで来る」

そのとき老人はいなかったので、彼は母を呼びにゆこうとしたが、参吉は「そんな大げさなことはよせよ」と云い、勝手へいって傷を洗った。左の眉のところが斜めに、一寸ばかり切れていた。殴ったとき拇指の爪が当ったのだろう、それほど深く切れてはいないが、上げ汐どきとみえてなかなか血が止らなかった。参吉が洗った傷へ塩を擦りこむのを見ながら、繁次はおろおろとあやまった。

「なんでもないよ、繁ちゃん」とそのとき参吉が云ったのだ、「――大丈夫だ、心配しなくってもいいよ」

その言葉がこたえたのはあとのことだ。

参吉はまもなく仏具屋へ奉公にゆき、すると茂兵衛はへんな女を家へ入れた。年は三十五六、小柄でひき緊まった躯つきにも、あさ黒い膚の、よくととのった目鼻だちにも、水しょうばいをした者に特有の媚があり、日髪、日風呂で、いつも白粉や香油の匂いをさせているため、たちまち長屋の女房たちの非難の的になった。――差配の武助が人別しらべにゆくと、親類の者で名はおみち、年は三十二歳、暫く滞在するだけだ、と答えたそうであるが、両隣りの人たちはあざ笑った。