Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
小野さんはぱたりと書物を伏せた。
芭蕉布の襖を開けると、押入の上段は夜具、下には柳行李が見える。小野さんは行李の上に畳んである背広を出して手早く着換え終る。帽子は壁に主を待つ。がらりと障子を明けて、赤い鼻緒の上草履に、カシミヤの靴足袋を無理に突き込んだ時、下女が来る。
「おや御出掛。少し御待ちなさいよ」
「何だ」と草履から顔を上げる。下女は笑っている。
「何か用かい」
「ええ」とやっぱり笑っている。
「何だ。冗談か」と行こうとすると、卸し立ての草履が片方足を離れて、拭き込んだ廊下を洋灯部屋の方へ滑って行く。
「ホホホホ余まり周章るもんだから。御客様ですよ」
「誰だい」
「あら待ってた癖に空っとぼけて……」
「待ってた? 何を」
「ホホホホ大変真面目ですね」と笑いながら、返事も待たず、入口へ引き返す。小野さんは気掛な顔をして障子の傍に上草履を揃えたまま廊下の突き当りを眺めている。何が出てくるかと思う。焦茶の中折が鴨居を越すほどの高い背を伸して、薄暗い廊下のはずれに折目正しく着こなした背広の地味なだけに、胸開の狭い胴衣から白い襯衣と白い襟が著るしく上品に見える。小野さんは姿よく着こなした衣裳を、見栄のせぬ廊下の片隅に、中ぶらりんに落ちつけて、光る眼鏡を斜めに、突き当りを眺めている。