Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate

Aozora Bunko

と謎は意味のある顔つきをした。

「池の緋鯉が跳ねますよ」と我は飽くまでも主張する。なるほど濁った水のなかで、ぽちゃりと云う音がした。

「おやおや。――御母さんの部屋では少しも聞えないよ」

聞えないんではない。謎で夢中になっていたのである。

「そう」と今度は我の方で意味のある顔つきをする。世はさまざまである。

「おや、もう蓮の葉が出たね」

「ええ。まだ気がつかなかったの」

「いいえ。今始て」と謎が云う。謎ばかり考えているものは迂濶である。欽吾と藤尾の事を引き抜くと頭は真空になる。蓮の葉どころではない。

蓮の葉が出たあとには蓮の花が咲く。蓮の花が咲いたあとには蚊帳を畳んで蔵へ入れる。それから蟋蟀が鳴く。時雨れる。木枯が吹く。……謎の女が謎の解決に苦しんでいるうちに世の中は変ってしまう。それでも謎の女は一つ所に坐って謎を解くつもりでいる。謎の女は世の中で自分ほど賢いものはないと思っている。迂濶だなどとは夢にも考えない。

緋鯉ががぽちゃりとまた跳ねる。薄濁のする水に、泥は沈んで、上皮だけは軽く温む底から、朦朧と朱い影が静かな土を動かして、浮いて来る。滑らかな波にきらりと射す日影を崩さぬほどに、尾を揺っているかと思うと、思い切ってぽんと水を敲いて飛びあがる。