Classici giapponesi con furigana
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むし
虫
江戸川 乱歩
Leggi 虫 (むし) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 44.053 caratteri · 86 schermate
間もなく半ば狂せる柾木と、木下芙蓉の死体とが、土蔵の二階でさし向いであった。燭台のたった一本の蝋燭が、赤茶けた光で、そこに恥もなく横わった、花嫁御の冷い裸身を照らし出し、それが、部屋の一方に飾ってある、等身大の木彫りの菩薩像や、青ざめたお能の面と、一種異様の、陰惨な、甘酸っぱい対照を為していた。
たった一時間前まで、心持の上では、千里も遠くにいて、寧ろ怖いものでさえあった、世間並に意地悪で、利口者の人気女優が、今何の抵抗力もなく、赤裸々のむくろを、彼の眼前一尺に曝しているかと思うと、柾木は不思議な感じがした。全く不可能な事柄が、突然夢の様に実現した気持であった。今度は反対に、軽蔑したり、憐んだりするのは、彼の方であった。手を握るはおろか、頬をつついても、抱きしめても、抛り出しても、相手はいつかの晩の様に、彼を笑うことも、嘲ることも出来ないのだ。何たる驚異であろう。幼年時代には彼の神様であり、この半年の間は、物狂おしきあこがれの的であった木下芙蓉が、今や全く彼の占有に帰したのである。
死体は、首に青黒い絞殺のあとがついているのと、皮膚の色がやや青ざめていた外は、生前と何の変りもなかった。