Classici giapponesi con furigana
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ほたる
蛍
織田 作之助
Leggi 蛍 (ほたる) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.875 caratteri · 21 schermate
酒も煙草も飲まず、ただそこらじゅう拭きまわるよりほかに何一つ道楽のなかった伊助が、横領されやしないかとひやひやしてきた寺田屋がはっきり自分のものになった今、はじめて浄瑠璃を習いたいというその気持に、登勢は胸が温まり、お習いやす、お習いやす……
伊助の浄瑠璃は吃りの小唄ほどではなかったが、下手ではなかった。習いはじめて一年目には土地の天狗番付に針の先で書いたような字で名前が出て、間もなく登勢が女の子を生んだ時は、お、お、お光があってお染がなかったら、の、の、野崎村になれへんさかいにと、子供の名をお染にするというくらいの凝り方で、千代のことは鶴千代と千代萩で呼び、汚い汚いといいながらも子供を可愛がった。宇治の螢狩も浄瑠璃の文句にあるといえば、連れて行くし、今が登勢は仕合せの絶頂かもしれなかった。
しかし、それだけにまた何か悲しいことが近いうちに起るのではなかろうかと、あらかじめ諦めておくのは、これはいったいなんとしたことであろう。
はたしてお染が四つの歳のことである。登勢も名を知っている彦根の城主が大老になった年の秋、西北の空に突然彗星があらわれて、はじめ二三尺の長さのものがいつか空いっぱいに伸びて人魂の化物のようにのたうちまわったかと思うと、地上ではコロリという疫病が流行りだして、お染がとられてしまった。