Classici giapponesi con furigana
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ばんじん
蛮人
山本 周五郎
Leggi 蛮人 (ばんじん) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6726 caratteri · 13 schermate
石膏像のような仲間うちで、彼女のそうした態度がみんなに気付かれぬはずはない、ことに茂吉は不安な眼で妻を跟け廻し、一方では彼の動作を鋭い憎悪で監視し始めた。
真夏のことであった。
午すこし前に、茂吉が焚口を見ようとして焜炉のほうへ近づくと、蒙々たる灰煙の中に誰かかがんでいる者がある、なおも近寄ってみるとそれはあの男で、床の上へ這うようにして何かをじっと覓めている、茂吉が覗きこむようにするとその気配に気付いて彼は振返ったが、慌てて何かを隠そうとするように両肱を曲げた、しかし茂吉はそれより早く、床の灰を染ている二三滴の赤いものの痕をみつけてしまった。
茂吉は自分の妻が二三日前から具合の悪い体であることに気付くと、何ともいえぬ恥辱と怒りを覚え、かっとしながら我知らず拳を握緊めて彼のほうへ突出した。しかし彼はふてぶてしく茂吉を見上げ、嘲るように下唇を反らせながら、さあどうにでもしてみろというように一歩前へ踏だした。――茂吉は胸を大きく波打たせ、剥出された眼で相手を鋭く睨みつけていたが、やがてくるりと踵をかえし、逃げるように裏手へ出て行ってしまった。
食事休みのとき、茂吉はそのことを仲間の者に話した、みんなは黙って聞いていたが、誰の顔にも苦しげな皺が寄り、穢れたものに触でもしたように唾を吐いた。