Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

Leggi 蜘蛛の夢 (くものゆめ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 147.189 caratteri · 298 schermate

Aozora Bunko

」

延津弥は黙って聴いていた。お熊はまだ帰らなかった。

「ねえ、お師匠さん。おまえさん、ほんとうに長之助の居どころを御存じないのでしょうか。」と、お兼はまた訊いた。

延津弥はやはり黙っていた。小さい庭にむかった檐さきの風鈴が夜風に音を立てているばかりで、二人の沈黙は暫くつづいた。

三

閏七月は誰かの予言どおり、かなり強い残暑に苦しめられたが、二十九日の牡丹餅が効を奏したのか、江戸にはさまでの病人もなく、まず目出たいといううちに、八月にはいって陽気もめっきりと涼しくなった。往来を飛びかう赤とんぼうの羽の光りにも、秋らしい日の色が見えるようになった。それからそれへと新しい噂に追われて、物忘れの早い江戸の人たちは、先々月の末に汗を拭きながら牡丹餅をこしらえたり、買い歩いたりした事を、遠い昔のように思いなして、もうその噂をする者もなかった。

その八月の二十一日の夜である。小梅の通源寺という寺のそばで、ひとりの女の死骸が発見された。女は千鳥の女房お兼で、手拭で絞め殺されていたのである。お兼がなんのために夜中こんな寂しい所へ来て、何者に殺されたのか、その子細はわからなかった。