Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

Leggi 蟹工船 (かにこうせん) di 小林 多喜二 (こばやしたきじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 61.890 caratteri · 125 schermate

Aozora Bunko

診断書を作って貰いたいんですけれどもと、一人が切り出した。

初め、吃驚したようだった。

「さあ、診断書はねえ……」

「この通りに書いて下さればいいんですが」

はがゆかった。

「この船では、それを書かせないことになってるんだよ。勝手にそう決めたらしいんだが。……後々のことがあるんでね」

気の短い、吃りの漁夫が「チェッ!」と舌打ちをしてしまった。

「この前、浅川君になぐられて、耳が聞えなくなった漁夫が来たので、何気なく診断書を書いてやったら、飛んでもないことになってしまってね。――それが何時までも証拠になるんで、浅川君にしちゃね……」

彼等は船医の室を出ながら、船医もやはり其処まで行くと、もう「俺達」の味方でなかったことを考えていた。

その漁夫は、然し「不思議に」どうにか生命を取りとめることが出来た。その代り、日中でもよく何かにつまずいて、のめる程暗い隅に転がったまま、その漁夫がうなっているのを、何日も何日も聞かされた。

彼が直りかけて、うめき声が皆を苦しめなくなった頃、前から寝たきりになっていた脚気の漁夫が死んでしまった。――二十七だった。東京、日暮里の周施屋から来たもので、一緒の仲間が十人程いた。