Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

Leggi 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 88.970 caratteri · 176 schermate

Aozora Bunko

淋しくこう思った。

と、その時、何んたる怪異であろう! 坐っている道了塚の下から、大岩を貫き、銀の一本の線のような、恐怖と悲哀とを綯い雑ぜにした男の声が、

「秘密は剖かない! 裏切りはしない! 助けてくれーッ」

と、聞こえて来たではないか。

「う、う、う!」

と薪左衛門は、呻き声をあげたが、やにわに天国の剣を引き抜き、春の白昼に現われた、「声の妖怪」を切り払うかのように、頭上に振り、

「あの声! 聞き覚えがある! ……二十年前に聞いた声だ! ここで、この道了塚で! ……秘密はあの声にあるのだ! 決闘の秘密は! ……おおおお、それにしても、二十年前に聞いたあの声が、二十年後の今日聞こえて来るとは?」

一つの影が、碑を掠め、薪左衛門の肩へ斑を置き、すぐ消えた。鳶が、地上にある鼠の死骸を目付け、それをくわえて、翔び上がったのであった。道了塚を巡って、酣の春は、華麗な宴を展開いていた。耕地には菜の花が、黄金の筵を敷き、灌漑用の水路には、水の銀箔が延べられてい、地平線を劃って点々と立っている村落からは、犬の吠え声と鶏の啼き声とが聞こえ、藁家の垣や庭には、木蓮や沈丁花や海棠や李が咲いていたが、紗を張ったような霞の中では、ただ白く、ただ薄赤く、ただ薄黄色く見えるばかりであった。