Classici giapponesi con furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Leggi 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 88.970 caratteri · 176 schermate
……妾、寝呆気て叫んだだけでございますもの」と云い、無邪気に、口をあけて笑った。
武士――五味左門は、
「ナニ、怖がらなくともよいと。……ふうん」
と、呆れて、まじまじと、栞の顔を見詰めた。
「あッ蜘蛛が」と叫ばれ、眼をさまされた。さすがの彼も、不意だったので胆をつぶし、思わず紙帳の隅へ飛び退がったまでで、相手を怖がったのでも何んでもなかった。怖がるといえば、栞こそ、怖がらなければならない筈である。はいったが最後、たいがいは殺される紙帳の中へはいり、殺人鬼のような当人の左門と向かい合っているのであるから。それだのに、その栞が、「怖がらなくともよい」と云う。「ふうん」と、左門としては呆れ返らざるを得なかった。
しばらく顔を見詰め合っている二人を、紙帳は、昼の陽光を浴びて、琥珀色に、明るく、蔽うていた。時々、横腹が蠕動し、ウネウネと皺を作ったり、フワリと膨れたりするのは、春風が、外から吹き当たるからで、そのつど、例の、血汐で描かれた巨大な蜘蛛が、数多い脚を動かした。
「まあ」と栞は、驚きの声をあげた。「あなた様は、先夜、妾の家へお泊まりくださいました、五味左門様では?」