Classici giapponesi con furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Leggi 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 88.970 caratteri · 176 schermate
「黙らっしゃい」と頼母は、とうとう癇癪を破裂させて叫んだ。
「突然呼び止めるさえあるに、腰の物を見せろとは何んだ! 成らぬ!」
「そう仰せられずに、お見せくだされ。相当の物をお差しでござろう」
「黙れ! 無礼な奴、ははア、貴様、追い剥ぎだな。腰の物拝見などと申し、近寄り、懐中物を奪うつもりであろう。ぶった斬るぞ!」
「賊ではござらぬ。ちと必要あって腰の物拝見したいのじゃ。何をお差しかな。まさか天国はお差しではござるまいが」
「ナニ、天国? あッはッはッ、何を申す、馬鹿な。天国や天座など、伝説中の人物、さような刀鍛冶など、存在したことござらぬ。鍛えた刀など、何んであろうぞ」
すると武士は、頭巾の中で、錆のある、少し嗄れた声で笑ったが、「貴殿も、天国不存在論者か。馬鹿者の一人か。まアよい、腰の物お見せなされ」と、近寄って来た。
頼母は、傍若無人といおうか、自信ある行動といおうか、相手の武士が、無造作に、近寄って来る態度に圧せられ、思わず二、三歩退いたが、冠っていた編笠を刎ね退け、刀の柄へ手をかけた。父の敵を討つまでは、前髪も取らぬと誓い、それを実行している頼母は、この時二十一歳であったが、前髪を立てていた。