Classici giapponesi con furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Leggi 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 88.970 caratteri · 176 schermate
「これは何んだ?」と、女の枕もとに転がっている、白い風呂敷包みの、長方形の物へ眼を移した時、彼は呟いた。やがて彼は手を延ばし、風呂敷包みを引き寄せ、包みを解いた。白木の刀箱が現われた。箱の表には、天国と書いてある。
「天国?」
彼は、魘されたような声で呟いた。瞬間に、額こそ秀でているが、顳の低い、頬の削けた、鼻が鳥の嘴のように鋭く高い、蒼白の顔色の、長目の彼の顔が、注した血で、燃えるように赧くなった。烈しい感動を受けたからである。
「天国?」
彼の肩がまず顫え、その顫えが、だんだんに全身へ伝わって行った。
「天国? ……まさか!」
にわかに、彼は口を歪め、眼尻へ皺を寄せた。嘲笑ったのである。
「まさか、こんな所に天国が!」
しかも彼の眼は、刀箱の箱書きの文字に食い付いているのであった。
彼が天国の剣に焦がれているのは、親譲りであった。彼の父、左衛門は、生前彼へこう云った。「我が家には、先祖から伝わった天国の剣があったのじゃ。それを今から二十年前、来栖勘兵衛、有賀又兵衛という、浪人の一党に襲われ、奪われた。……どうともして探し出して、取り返したいものだ」と。