Classici giapponesi con furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Leggi 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 88.970 caratteri · 176 schermate
その栞が、しばらく経った時には屋敷の奥の、古びた十畳ばかりの部屋に、父、薪左衛門と向かいあって坐っていた。
栞は、膝の上の刀箱を、父の方へ差し出したが、
「ただ今お話し申し上げました、堰の水に浮いておりました刀箱は、これでございます。ご覧なさりませ、天国と、箱書きしてございます」
と云い、緞子の厚い座布団の上へ坐り、蒔絵の脇息へ倚っている、父親の顔を見た。
薪左衛門は、その卯の花のように白い総髪を、肩の上でユサリと揺り、おちつきなく、キョトキョト動く眼を、グッと据えたが、やっと咽喉から押し出したような嗄れ声で、
「ナニ、天国※(感嘆符疑問符、1-8-78) ……まことか! ……まことなりやお手柄、我ら助かる! 身の面目になる!」
と云ったが、突然、棚から陶器が転げ落ちるような声で笑い出し、
「贋物であろう、贋物であろう、贋物の天国、鑑定してやろうぞ!」
と、鉤のように曲がっている左右の指で、ムズと箱を掴んだ。紐が解かれ、蓋が開けられた。箱の底に沈んでいたのは、古錦襴の袋に入れられた白鞘の剣であった。やがて鞘は払われ、刀身があらわれた。
薪左衛門は、狂人ながら、さすがは武士、白木の柄を両手に持ち、柄頭を丹田へ付け、鉾子先を、斜に、両眼の間、ずっと彼方に立て、ジッと刀身を見詰めた。