Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

けれども表向兄の承諾を求めると、とうてい行われにくい用件が多いので、自分はつい機会を見ては母の懐に一人抱かれようとした。

母は自分が三沢のために岡田から金を借りた顛末を聞いて驚いた顔をした。

「そんな女のためにお金を使う訳がないじゃないか、三沢さんだって。馬鹿らしい」と云った。

「だけど、そこには三沢も義理があるんだから」と自分は弁解した。

「義理義理って、御母さんには解らないよ、お前のいう事は。気の毒なら、手ぶらで見舞に行くだけの事じゃないか。もし手ぶらできまりが悪ければ、菓子折の一つも持って行きゃあたくさんだね」

自分はしばらく黙っていた。

「よし三沢さんにそれだけの義理があったにしたところでさ。何もお前が岡田なんぞからそれを借りて上げるだけの義理はなかろうじゃないか」

「じゃよござんす」と自分は答えた。そうして立って下へ行こうとした。兄は湯に入っていた。嫂は小さい下の座敷を借りて髪を結わしていた。座敷には母よりほかにいなかった。

「まあお待ちよ」と母が呼び留めた。「何も出して上げないと云ってやしないじゃないか」

母の言葉には兄一人でさえたくさんなところへ、何の必要があって、自分までこの年寄を苛めるかと云わぬばかりの心細さが籠っていた。