Classici giapponesi con furigana
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こうじん
行人
Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate
その内でも母は最も気を揉んだ。当人自身も痩せているのを何かの刑罰のように忌み恐れた。それでもちっとも肥れなかった。
自分は母の言葉を聞きながら、この苦しい愛嬌を、慰藉の一つとしてわが子の前に捧げなければならない彼女の心事を気の毒に思った。兄に比べると遥かに頑丈な体躯を起しながら、「じゃ御先へ」と母に挨拶して下へ降りた。風呂場の隣の小さい座敷をちょいと覗くと、嫂は今髷ができたところで、合せ鏡をして鬢だの髱だのを撫でていた。
「もう済んだんですか」
「ええ。どこへいらっしゃるの」
「御湯へ這入ろうと思って。お先へ失礼してもよござんすか」
「さあどうぞ」
自分は湯に入りながら、嫂が今日に限ってなんでまた丸髷なんて仰山な頭に結うのだろうと思った。大きな声を出して、「姉さん、姉さん」と湯壺の中から呼んで見た。「なによ」という返事が廊下の出口で聞こえた。
「御苦労さま、この暑いのに」と自分が云った。
「なぜ」
「なぜって、兄さんの御好みなんですか、そのでこでこ頭は」
「知らないわ」
嫂の廊下伝いに梯子段を上る草履の音がはっきり聞こえた。
廊下の前は中庭で八つ手の株が見えた。