Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

「一両日後れるかも知れぬ」

葉書に大きく書いた文字はただこれだけであった。

「まるで電報のようでございますね」

「それであなた笑ってたんですか」

「そう云う訳でもございませんけれども、何だかあんまり……」

お兼さんはそこで黙ってしまった。自分はお兼さんをもっと笑わせたかった。

「あんまり、どうしました」

「あんまりもったいないようですから」

お兼さんのお父さんというのは大変緻密な人で、お兼さんの所へ手紙を寄こすにも、たいていは葉書で用を弁じている代りに蠅の頭のような字を十五行も並べて来るという話しを、お兼さんは面白そうにした。自分は三沢の事を全く忘れて、ただ前にいるお兼さんを的に、さまざまの事を尋ねたり聞いたりした。

「奥さん、子供が欲しかありませんか。こうやって、一人で留守をしていると退屈するでしょう」

「そうでもございませんわ。私兄弟の多い家に生れて大変苦労して育ったせいか、子供ほど親を意地見るものはないと思っておりますから」

「だって一人や二人はいいでしょう。岡田君は子供がないと淋しくっていけないって云ってましたよ」

お兼さんは何にも答えずに窓の外の方を眺めていた。