Classici giapponesi con furigana
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こうじん
行人
Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate
三沢は三日前大阪に着いて二日ばかり寝たあげくとうとう病院に入ったのである。自分は病院の名を指してお兼さんに地理を聞いた。お兼さんは地理だけはよく呑み込んでいたが、病院の名は知らなかった。自分はとにかく鞄を提げて岡田の家を出る事にした。
「どうもとんだ事でございますね」とお兼さんは繰り返し繰り返し気の毒がった。断るのを無理に、下女が鞄を持って停車場まで随いて来た。自分は途中でなおもこの下女を返そうとしたが、何とか云ってなかなか帰らなかった。その言葉は解るには解るが、自分のようにこの土地に親しみのないものにはとても覚えられなかった。別れるとき今まで世話になった礼に一円やったら「さいなら、お機嫌よう」と云った。
電車を下りて俥に乗ると、その俥は軌道を横切って細い通りを真直に馳けた。馳け方があまり烈しいので、向うから来る自転車だの俥だのと幾度か衝突しそうにした。自分ははらはらしながら病院の前に降ろされた。
鞄を持ったまま三階に上った自分は、三沢を探すため方々の室を覗いて歩いた。三沢は廊下の突き当りの八畳に、氷嚢を胸の上に載せて寝ていた。
「どうした」と自分は室に入るや否や聞いた。