Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

それより以上の事を尋ねると、今朝看護婦会から派出されたばかりで、何もまだ分らないんだと云って平気でいた。仕方なしに下へ降りて医員に尋ねたら、その男もまだ三沢の名を知らなかった。けれども患者の病名だの処方だのを書いた紙箋を繰って、胃が少し糜爛れたんだという事だけ教えてくれた。

自分はまた三沢の傍へ行った。彼は氷嚢を胃の上に載せたまま、「君その窓から外を見てみろ」、と云った。窓は正面に二つ側面に一つあったけれども、いずれも西洋式で普通より高い上に、病人は日本の蒲団を敷いて寝ているんだから、彼の眼には強い色の空と、電信線の一部分が筋違に見えるだけであった。

自分は窓側に手を突いて、外を見下した。すると何よりもまず高い煙突から出る遠い煙が眼に入った。その煙は市全体を掩うように大きな建物の上を這い廻っていた。

「河が見えるだろう」と三沢が云った。

大きな河が左手の方に少し見えた。

「山も見えるだろう」と三沢がまた云った。

山は正面にさっきから見えていた。

それが暗がり峠で、昔は多分大きな木ばかり生えていたのだろうが、今はあの通り明るい峠に変化したんだとか、もう少しするとあの山の下を突き貫いて、奈良へ電車が通うようになるんだとか、三沢は今誰かから聞いたばかりの事を元気よく語った。