Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

その嫂は父に出す絵端書を持ったまま何か考えていた。「叔父さんは風流人だから歌が好いでしょう」と岡田に勧められて、「歌なんぞできるもんですか」と断った。岡田はまたお重へ宛てたのに、「あなたの口の悪いところを聞けないのが残念だ」と細かく謹んで書いたので、兄から「将棋の駒がまだ祟ってると見えるね」と笑われていた。

絵端書が済んで、しばらく世間話をした後で、岡田とお兼さんはまた来ると云って、母や兄が止めるのも聞かずに帰って行った。

「お兼さんは本当に奥さんらしくなったね」

「宅へ仕立物を持って来た時分を考えると、まるで見違えるようだよ」

母が兄とお兼さんを評し合った言葉の裏には、己れがそれだけ年を取ったという淡い哀愁を含んでいた。

「お貞さんだって、もう直ですよお母さん」と自分は横合から口を出した。

「本当にね」と母は答えた。母は腹の中で、まだ片づく当のないお重の事でも考えているらしかった。兄は自分を顧みて、「三沢が病気だったので、どこへも行かなかったそうだね」と聞いた。自分は「ええ。とんだところへ引っかかってどこへも行かずじまいでした」と答えた。自分と兄とは常にこのくらい懸隔のある言葉で応対するのが例になっていた。