Classici giapponesi con furigana
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こうじん
行人
Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate
三
自分はその夕方宿の払を済まして母や兄といっしょになった。三人は少し夕飯が後れたと見えて、膳を控えたまま楊枝を使っていた。自分は彼らを散歩に連れ出そうと試みた。母は疲れたと云って応じなかった。兄は面倒らしかった。嫂だけには行きたい様子が見えた。
「今夜は御止しよ」と母が留めた。
兄は寝転びながら話をした。そうして口では大阪を知ってるような事を云った。けれどもよく聞いて見ると、知っているのは天王寺だの中の島だの千日前だのという名前ばかりで地理上の知識になると、まるで夢のように散漫極まるものであった。
もっとも「大坂城の石垣の石は実に大きかった」とか、「天王寺の塔の上へ登って下を見たら眼が眩んだ」とか断片的の光景は実際覚えているらしかった。そのうちで一番面白く自分の耳に響いたのは彼の昔泊ったという宿屋の夜の景色であった。
「細い通りの角で、欄干の所へ出ると柳が見えた。家が隙間なく並んでいる割には閑静で、窓から眺められる長い橋も画のように趣があった。その上を通る車の音も愉快に響いた。もっとも宿そのものは不親切で汚なくって困ったが……」
「いったいそれは大阪のどこなの」