Classici giapponesi con furigana
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せいこのしじん
西湖の屍人
海野 十三
Leggi 西湖の屍人 (せいこのしじん) di 海野 十三 (うんのじゅうざ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.487 caratteri · 39 schermate
「おお憎むべき幻影よ。わが前より消えてなくなれ。消えてなくなれ!」
彼は両眼をカッと見開き、この一見意味のない台辞を嘔きちらしていたが軈てブルブルと身震いをすると、パッと身を飜して駈け出した。
「それッ、逃がすな!」
と叫んだ帆村の声は、いつの間にか普段の、あの胸のすくような名調子に変っていた。
「よオし、掴えてやる!」
と私は呶鳴った。
(これは冗談ごとではなくて、なにか事件かもしれない)私の酔いは、やっと醒めかかった。
私は兵士のように身を挺して、怪青年の背後に追いすがった。右の肘をウンと伸すと、運よく彼の肩口に手が触れた。勇躍。
「ヤッ!」
と飛びかかった。
「無念!」
ひっぱずされて(酒精の祟りもあって)身体が宙にクルリと一回転した揚句、イヤというほど腰骨をうちつけた。じっと地面にのびているより外に仕方がなかった。帆村が勇敢にも私の身体を飛び越えて、追駈けていったのがぼんやりわかった。だが、こっちは全身がきかないのだ。どこに自分の腕があり、どこに自分の足があるのだか、皆目見当がつかなかった。気がついたのは――此際呑気な話であるが――なにかしら、馥郁たる匂とでもいいたい香が其の辺にすることだった。