Classici giapponesi con furigana
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スペインけんのいえ
西班牙犬の家
佐藤 春夫
Leggi 西班牙犬の家 (スペインけんのいえ) di 佐藤 春夫 (さとうはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7131 caratteri · 15 schermate
どこに時計があるのであろう。濃い樺色の壁にはどこにもない。あああれだ、あの例の大きな卓の上の置時計だ。私はこの家の今の主人と見るべき西班牙犬に少し遠慮しながら、卓の方へ歩いて行った。
卓の片隅には果して、窓の外から見たとおり、今では白く燃えつくした煙草が一本あった。
時計は文字板の上に絵が描いてあって、その玩具のような趣向がいかにもこの部屋の半野蛮な様子に対照をしている。文字板の上には一人の貴婦人と、一人の紳士と、それにもう一人の男がいて、その男は一秒間に一度ずつこの紳士の左の靴をみがくわけなのである。馬鹿馬鹿しいけれどもその絵が面白かった。その貴婦人の襞の多い笹べりのついた大きな裾を地に曳いた具合や、シルクハットの紳士の頬髯の様式などは、外国の風俗を知らない私の目にももう半世紀も時代がついて見える。さて可哀想なはこの靴磨きだ。彼はこの平静な家のなかの、そのまたなかの小さな別世界で夜も昼もこうして一つの靴ばかり磨いているのだ。おれは見ているうちにこの単調な不断の動作に、自分の肩が凝って来るのを感ずる。それで時計の示す時間は一時十五分――これは一時間も遅れていそうだった。