Classici giapponesi con furigana
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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Leggi 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 67.486 caratteri · 144 schermate
そして、そのおぞましさへの嫌悪といっしょに、女はさしものあの若者への自分の恋までもが、急にあとかたもなく消え、さめ果ててゆくのがわかった。……まるで、夢からさめたように。
もう、その人形をそばに置いておくのもいやであった。女は、几帳の上からやにわにいちばん大きなノミを取ると、人形の頭に突き立て、袿の袖を振って根かぎりの力でそれを打った。人形はたちまち二つに割れ、水の底のような月光のみちた部屋の中で、破壊され、すでに亡骸と化した女の恋そのままのすがたに、生木の白い裂けめをあらわにしてころげた。
女が、ようやく恋を忘れ、そろそろ健康も回復してきたころ、御所には恒例の菊見の季節がきた。
例年と同じように女は甲斐々々しく立ち働き、若い女どもの指図をして、また禁裏へと招かれた大臣たちの警護の武士の一団の酒肴の世話をしていた。大きな酒の甕をもって、革具くさい武士たちのあいだで杯を満たしてまわりながら、ふと女は、春のあの若い武士が――彼女が身も細るほどの思いでけんめいにその人形をつくった当の武士が――しずかに杯をふくんでいるのを見た。
女は、すっかり彼のことを忘れていたのに気づいた。