Classici giapponesi con furigana
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おつきさまのうた
豊島与志雄童話集
豊島 与志雄
Leggi 豊島与志雄童話集 (おつきさまのうた) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.569 caratteri · 336 schermate
その言葉を、正夫の小父さんがききとがめました。そして、どうかして匂いをつける仕方はあるまいかと、相談しました。するとその人は、植物のことなら何一つ知らないことはないというほどえらい学者で、桜の花に梅の花のような匂いをつけてあげようと、引き受けたのでした。ある薬を桜の幹に注射するんだそうです。けれど、その薬はたいへん貴いもので、たくさんはないから、いちばん立派な大きい桜の木を一本えらびました。
「一本でもけっこうです」と小父さんは叫びました。「それこそ、日本一の……世界一の……桜になります」
その注射が、今晩なされることになっていました。すると、明日、朝日がさす頃になると、桜の花は梅の花のようなよい匂いをたてるそうでした。
正夫は私の顔を心配そうにながめました。
「大丈夫でしょうか。注射って、いたいでしょうね」
「そうだねえ……」
考えてみると、私も心配になってきました。
けれど、もう仕方ありませんでした。向こうから、小父さんに案内されてあの人がやってきました。シルクハットをかぶり、ぴかぴか光る靴をはき、小さな鞄をかかえ、ながい口髭をぴんとはやし、鼻眼鏡をかけ、眼鏡のふちから一本のほそい金鎖をたらし、それを襟もとにとめていました。