Classici giapponesi con furigana
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へんさいじょき
貢太郎見聞録
田中 貢太郎
Leggi 貢太郎見聞録 (へんさいじょき) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 29.162 caratteri · 59 schermate
小柄な寿月君の細君が、線路の上に敷いた筵の上に坐って洋傘をさし、嬰児を膝にしていた。
「や、奥さんですか、大変なことでしたね、けがはなかったのですか」
「私たちはなんともなかったのですが、やどが横須賀へ往ってるものですから、それを心配してるのですよ」
砲兵工廠に勤めている寿月君は、暑中休暇を利用して横須賀へ遊びに往っているところであった。
「横須賀は、そんなことはないでしょう、大丈夫ですよ」
私はそんな気休めを言って引き返したが、その実心配でたまらなかった。私はそれから坂の左側になった小さな洋食屋の前へと往った。私はその前の線路の上にも、椅子に腰をかけた五六人の人びとを見出した。
「お宅はなんともありませんでしたか、たいへんなことになりました」
むすめむすめした商売屋のお神さんらしくない洋食屋のお神さんが、涙ぐましい声で挨拶した。その神さんの傍に鼻の黒子の眼につく可愛い女が、人なつこい顔をしていた。
「どうだね、びっくりしたかね」
私は坂をおりて寄宿舎の庭へ帰ろうとしたが、煙草が飲みたくなったので、校長の店によって敷島を五袋もらい、ついでに夜の燈火のことを思い出して十本の蝋燭ももらって出た。