Classici giapponesi con furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Leggi 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 26.416 caratteri · 53 schermate
なにごともなかったのだろう、「子供みてえなやつだ」と呟きながら、戻って来て坐った。登は病人を眺めていた。
「一刻ばかりまえですが」と治兵衛が話しだした、「うちの嬶に粥を持たせてよこすと、ええ、昨日の午から寝ていたんで、粥を拵えて持って来させると、そこの仕事場で倒れていたんだそうです」
六帖と二帖の住居にくっつけて、三坪ばかりの板敷の仕事場がある。佐八が自分で造ったのだろう、天床もない板壁の、掘立て小屋のようなもので、車の輻を作る材料や道具類が、一枚敷いた薄縁のまわりにちらばっていた。――おことが来たとき、佐八はそこに倒れたまま呻いており、板敷に血が流れていた。おことの知らせで治兵衛が駆けつけ、寝床へ入れるとまた吐血した。
「金盥へ半分も吐きましたよ」と治兵衛は声をひそめて云った、「抱いているこっちも吐きそうになりました、私はてっきりこれでいっちまうもんだと思いましたよ」
佐八がふっと眼をあいた。
「おなか」と云って、佐八はあたりを見まわした、「おなかどうして来たんだ」
静かな、はっきりした声であった。
「別れたかみさんです」と治兵衛が登に囁いた、「十七八年もまえに別れたんですがねえ、ええ、おなかという名前でしたよ」