Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

Leggi 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 26.416 caratteri · 53 schermate

Aozora Bunko

――また向うへ戻りたくなるんじゃあないのか。

――お願いよ、抱いて。

佐八はそっと、おなかを抱きよせた。おなかは片手でなにかを直し、それから双の腕を佐八に掛けて、力いっぱい抱きつき、同時に「ひ」と短く、するどい悲鳴をあげた。

――放さないで。

おなかはしがみついたまま云った。

――あたしを放さないで。

そしておなかは絶息した。

「左の乳の下を、匕首で一と突きでした」と佐八は云った、「医者を呼ぶまでもない、一と突きで即死です、……これでもうおわかりでしょう、あいつは放さないでくれと云いました、私も放したくはなかった、いちどはその匕首を手に取ってみたが、おなかのやつが死んではいけないと云っているようで、死ぬことは諦めました、そして、そうです」

佐八は咳こんだ。躰力が消耗しきっているため、躯を折り曲げ、枕を両手で掴んで、いまにも息が絶えるかと思うほど、苦しげに咳いった。登はすり寄って、骨のあらわな背を撫でてやり、咳がおさまるのを待って、そっと水をすすらせた。「そうです」佐八は暫くして、しゃがれた弱よわしい声で云った、「昨日この裏で掘り出されたのが、おなかです、崖崩れのあるまえには、あそこが私の仕事場でした、私は仕事場の下におなかを埋めて、ずっといっしょにくらして来たのです」