Classici giapponesi con furigana
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えちごのふゆ
越後の冬
小川 未明
Leggi 越後の冬 (えちごのふゆ) di 小川 未明 (おがわみめい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7272 caratteri · 15 schermate
「ああ、もう晩方になった。まだお母は帰って来やしゃらん……。」
太吉は坂を下って、杉林の処まで来た。けれど母の姿は、まだ見えなかった。暮れるに早い山の林――その下蔭が暗くなった。山雀やら、四十雀やら、その他の小鳥が、チェンチェンツーツーと林の暗い、繁みで小啼をしていた。
「お母!」と呼んで見た。
けれど、その声は空しく木精に響いたばかりだ。魂消たものかパタパタと鳥の羽叩きしたのが聞えた。
耳を澄すと、水車の音が此処まで聞えて来る。ただ悲しいと思ってその音に耳を澄していると、
「お母――病気で――死にそうになって――道で臥れていやしゃ――る。」
と歌っているような。その歌っているのが、誰かが歌っているような。その誰かが自分であって、自分の心が歌っているような。そうかと思うとやはり水車が歌っているような。――太吉は、母が病気で道で臥れているのでないかと思った。
そう思うと胸の裡が騒ぎ出した。もう一刻もこうやっていられなくなった。彼は仕度をしようと走って家へ帰った。家へ入ると急に中が真暗になったようで、窓から明りが差し込んでいるばかり。それも悲しい晩方の空の色に、何となく一家の不幸を語っているようだ。