Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ろじょう

路上

芥川 竜之介

Leggi 路上 (ろじょう) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 43.539 caratteri · 87 schermate

Aozora Bunko

僕は何も君を怒らす心算で云ったんじゃないんだが――いや、ない所か、君の知識の該博なのには、夙に敬服に堪えないくらいなんだ。だからまあ、怒らないでくれ給え。」

近藤は執念深く口を噤んで、卓子の上の紅茶茶碗へじっと眼を据えていたが、大井がこう云うと同時に、突然椅子から立ち上って、呆気に取られている連中を後に、さっさと部屋を出て行ってしまった。一座は互に顔を見合せたまま、しばらくの間は気まずい沈黙を守っていなければならなかった。が、やがて俊助は空嘯いている大井の方へ、ちょいと顎で相図をすると、微笑を含んだ静な声で、

「僕は御先へ御免を蒙るから。――」

これが当夜、彼の口を洩れた、最初のそうしてまた最後の言葉だったのである。

十五

するとその後また一週間と経たない内に、俊助は上野行の電車の中で、偶然辰子と顔を合せた。

それは春先の東京に珍しくない、埃風の吹く午後だった。俊助は大学から銀座の八咫屋へ額縁の註文に廻った帰りで、尾張町の角から電車へ乗ると、ぎっしり両側の席を埋めた乗客の中に、辰子の寂しい顔が見えた。彼が電車の入口に立った時、彼女はやはり黒い絹の肩懸をかけて、膝の上にひろげた婦人雑誌へ、つつましい眼を落しているらしかった。