Classici giapponesi con furigana
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ろじょう
路上
Leggi 路上 (ろじょう) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 43.539 caratteri · 87 schermate
俊助はこの病室の戸口に立って、窓の外を塞いでいる白椿の花を眺めた時、何となく西洋の尼寺へでも行ったような心もちがした。
「これは長野のある資産家の御嬢さんですが、何でも縁談が調わなかったので、発狂したのだとか云う事です。」
「御可哀そうね。」
辰子は細い声で、囁くようにこう云った。が、初子は同情と云うよりも、むしろ好奇心に満ちた眼を輝かせて、じっと令嬢の横顔を見つめていた。
「オルガンだけは忘れないと見えるね。」
「オルガンばかりじゃない。この患者は画も描く。裁縫もする。字なんぞは殊に巧だ。」
新田は俊助にこう云ってから、三人を戸口に残して置いて、静にオルガンの側へ歩み寄った。が、令嬢はまるでそれに気がつかないかのごとく、依然として鍵盤に指を走らせ続けていた。
「今日は。御気分はいかがです?」
新田は二三度繰返して問いかけたが、令嬢はやはり窓の外の白椿と向い合ったまま、振返る気色さえ見せなかった。のみならず、新田が軽く肩へ手をかけると、恐ろしい勢いでふり払いながら、それでも指だけは間違いなく、この病室の空気にふさわしい、陰鬱な曲を弾きやめなかった。
三人は一種の無気味さを感じて無言のまま、部屋を外へ退いた。