Classici giapponesi con furigana
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えんぽうのはは
遠方の母
小川 未明
Leggi 遠方の母 (えんぽうのはは) di 小川 未明 (おがわみめい) in giapponese con furigana. JLPT N3. Tocca una parola per il significato.
N3 · intermedio · kanji e kana moderni · 3382 caratteri · 7 schermate
」といって、うちわの中の女の人を指さしたのでした。
正ちゃんは、じっと、その絵にみとれていましたが、
「お母ちゃん。」といって、急に、かわいらしい手で、しっかりとうちわの柄をつかんでしまって、放しませんでした。
その絵の女の人の顔は、あちらを向いているので半分しか描いてありません。けれど若い、しとやかな、美しい姿をしていました。そして、墨絵で書かれた町は、黒く浮き出て、町の屋根を赤く染めて、夕焼けの空が、もの悲しく見えていたのです。
子供の目に、その絵は、どんなふうに映ったでしょうか。それをだれも知る人はありません。しかし正ちゃんは、そのうちわを持つと、じっとその絵に見入っていました。赤い絵の具の色が、水晶のように、清らかに澄んだ、正ちゃんの瞳の中にうつるのでありました。
「坊ちゃんは、このうちわが、大好きですね。」と、女中は、笑いながらいいました。
正ちゃんは、寝起きのいい子でありましたけれど、おりには、不きげんで、泣くこともありました。そんなとき、彼女は、うちわを持ってきて、
「お母ちゃんが、お母ちゃんが……。」といいました。哀れな子供は、ものいわない絵に見入って、泣きやむのがつねでありました。