Classici giapponesi con furigana
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えんぽうのはは
遠方の母
小川 未明
Leggi 遠方の母 (えんぽうのはは) di 小川 未明 (おがわみめい) in giapponese con furigana. JLPT N3. Tocca una parola per il significato.
N3 · intermedio · kanji e kana moderni · 3382 caratteri · 7 schermate
けれど、うちわはなかなか見つかりませんでした。たまたま売れ残りのうちわがあっても、それは、前の正ちゃんの大好きなうちわとは似つきもしないもので、正ちゃんは、それを手に取ると、だまって捨ててしまいました。
女中は、それから、まだどんなに探して歩いたことでしょう。
「お母ちゃんない、……お母ちゃんない?」と、脊中で正ちゃんはいいました。
「いくら探しても、どこにも、あれと同じうちわはありませんよ。」と、彼女は、答えました。
まだ、三つの正ちゃんにも、その意味がわかったものとみえて、正ちゃんは、女中の脊中で大あばれをしました。
「お母ちゃん、……お母ちゃん……。」といって、泣きました。
女中は、しみじみと、これほどまでに坊ちゃんが、ほんとうのお母さんのごとく思っているものを、自分が粗末にしたことは、まちがっていたと、心から悪かったと思いました。そして、どんなにしても、あれと同じようなうちわを探さなければならぬと思いました。
哀れな彼女は、町の中を歩いて、歩いてまわったのです。とうとう足は、疲れました。
そのうちに、日はまったく暮れてしまった。そして、秋の夜らしく、淡いもやが、一面に町の屋根にかかりました。