Classici giapponesi con furigana
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せんきょさつじんじけん
選挙殺人事件
Leggi 選挙殺人事件 (せんきょさつじんじけん) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.782 caratteri · 28 schermate
しかし、四五日前といえば、いかにも日がたちすぎている。誰かの死体が発見されてからでも十日にはなる。犯罪を隠すためなら、もっと早く燃すべきだ。部屋の中を見廻すと、芥川や太宰の本はもう見られなくて、およそ通俗な雑誌類があるだけだ。
「芥川や太宰はもうお読みにならないのですか」こうきくと、夫人がそれに答えて、
「それも燃しちゃったんですよ」
三高はフッフッと力のない笑声をたてた。苦笑であろう。
「変な本、ない方がいいわ。ふだん読みもしない本」
「選挙の時だけ読んだんですか」
「選挙前から凝りだしたんですけど、自殺した人の小説本ですッてね。面白くもない。でも、あの本だけは、私もあとで読んでみたかったわ。アア無情」
「アア無情?」
「ジャンバルジャンですよ。私も結婚前から、話にはきいていた本ですもの」
寒吉は声がとぎれて出なくなってしまったのである。
「アア無情」それは酔ッ払ッて泣きだした三高のセリフではないか。三高は酔余のことで覚えがないのか、今までと変りなく、ちょッと苦笑しているだけである。
「あのときのセリフには深い曰くがあるらしいぞ」こう気がつくと、矢も楯もたまらない気持になり、寒吉はイトマをつげて大急ぎで自宅へ戻ると、メモをひらいた。