Classici giapponesi con furigana
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きょうどてきみかく
郷土的味覚
寺田 寅彦
Leggi 郷土的味覚 (きょうどてきみかく) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2946 caratteri · 6 schermate
昔の高坂橋の南詰に大きな榎樹があった。橙紅色の丸薬のような実の落ち散ったのを拾って噛み砕くと堅い核の中に白い仁があってそれが特殊な甘味をもっているのであった。この榎樹から東の方に並んで数本の大きな椋の樹があった。椋の実はちょっと干葡萄のような色と味をもっている。これが馬糞などと一緒に散らばっているのを平気で拾って喰うのであった。われわれ当時の自然児にはそれが汚いともなんとも思われなかった。これらの樹の実を尋ねて飛んで来る木椋鳥の大群も愉快な見物であった。「千羽に一羽の毒がある」と云ってこの鳥の捕獲を誡めた野中兼山の機智の話を想い出す。
公園の御桜山に大きな槙の樹があってその実を拾いに行ったこともあった。緑色の楕円形をした食えない部分があってその頭にこれと同じくらいの大きさで美しい紅色をした甘い団塊が附着している。噛み破ると透明な粘液の糸を引く。これも国を離れて以来再びめぐり逢わないものの一つである。
旧城のお濠の菱の実も今の自分には珍しいものになってしまった。あの、黒檀で彫刻した鬼の面とでも云ったような感じのする外殻を噛み破ると中には真白な果肉があって、その周囲にはほのかな紫色がにじんでいたように覚えている。