Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きょうどてきみかく

郷土的味覚

寺田 寅彦

Leggi 郷土的味覚 (きょうどてきみかく) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2946 caratteri · 6 schermate

Aozora Bunko

そういうものが食物になり得るという事さえ都会の子供等は夢にも知らないのである。考えてみると可哀相なような気がする。

滞欧中のある冬にイタリアへ遊びに行った。ローマの大学を訪ねたとき、物理学教室の入口に竹の一叢を見付けてなつかしい想いをした。その日の夕方、ホテルの食堂で食事のあとに出した菓物鉢の数々の果物の中にただ一つ柿の実がのっかっていた。同時に食事していた客の誰よりも真先に自分のところへこの菓物鉢が廻って来たので、自分は遠慮なくこのただ一つの柿を取上げた。少しはしたないような気はしたが、天涯の孤客だからと自分で自分に申し訳を云った。このローマの宿の一顆の柿の郷土的味覚はいまだに忘れ難いものの一つである。

味覚の追憶などはあまり品の好い話ではないようである。しかしそれだけに原始的本能的に深刻な真実性をもっている。そうしてその背後にはやはり自分の一生涯の人間生活の記録が隠されているのである。(昭和七年二月『郷土読本』)