Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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そらとぶあくま

酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕

酒井 嘉七

Leggi 酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕 (そらとぶあくま) di 酒井 嘉七 (さかいかしち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.471 caratteri · 28 schermate

Aozora Bunko

するとまたしても、虚弱の身には急いで綿の入ったものを着なければならない。気候の変化や気温の上下は病弱の身に人一倍敏感である。しかし、これがこの辺りの特殊な気候の様相であるという。自分は日本でも一二の健康都市といわれるK市の山麓に静かに住みながら(知らぬながらにも)何を好んでこの気候不順なS町に移って来たのであろうか。それも病気保養のために! 自分は何とも答えられない。ただ運命の大きな手が私を引きよせたのだ、としか考えられない。

○月 ○日

私の住んでいるのは離れの二階である。――尠くとも貸借関係の初めには「離れの二階」ということで話が始まった。しかし、私はその離れの二階なるものを見て、余りにも奇異なその構造に唖然とした。離れとは云うものの実は土蔵である。※幅の広い、昔風の堅固な土蔵であって、入口を入ると、使用されていない階下は窓が閉じられて薄暗く、鬼気さえ感じられる。床板は頑丈な木材を用い、巨木を思わせる柱の幾本かが、さながら城の内部を連想させるように突き立っている。右側に二階に通じる階段があって、これを登りきると、階段の部分の空間が、横手から軽い滑車の音と共に滑り出す床板によって遮断される。