Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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そらとぶあくま

酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕

酒井 嘉七

Leggi 酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕 (そらとぶあくま) di 酒井 嘉七 (さかいかしち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.471 caratteri · 28 schermate

Aozora Bunko

健康な人間の心臓のように、時間的に規則正しく廻転していた歯車と歯車が、ギギーと嫌な音を立てて瞬間的に活動を停止する。その度に自分は、烈しい憤りの場合に生じる、あの忘我の興奮に似たものを感じ、現世とも天国とも地獄とも判断のつかない、ただ混沌たる世界に突き落される。それは長い時間ではない。しかし、その間の言動に関しては、後刻いささかの記憶ももたない。この発作が本格的な形式を採るとき、私は狂人と呼ばれなければならない。私の母はこの種の病気を経験したのではあるまいか。そうとすれば、自分の体内には母と同じ血液が流れている筈である。こうした恐怖すべき事実を自分から秘すために、父はあの心労、労苦を敢てしたのではあるまいか。――もう悪魔が箱の中から飛び出したも同じである。しかし、私は驚かない。総ての覚悟はできている。

○月 ○日

紗の幕をそっと下したような薄い靄を通して、もう樹々の梢のあたりまで登った太陽が笠をかむって真っ白に見える。さながら春の宵に見るたえ入るような悩ましい十五夜の月である――人はこう見るかも知れない。しかし、あの不気味にまで灰色に白い太陽の色はどうだ。