Classici giapponesi con furigana
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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Leggi 野菊の墓 (ななこ) di 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 71.271 caratteri · 144 schermate
こうしてお家も見えているのに、兄さんは、二人一緒になると決心しろって、今でもそう思ってて下さるのかしら」
おとよは口の底でこういって省作の家を見てるのである。縁談の事もいよいよ事実になって来たらしいので、おとよは俄かに省作に逢いたくなった。逢って今さら相談する必要はないけれど、苦しい胸を話したいのだ。十時も過ぎたと思うに蚕籠はまだいくつも洗わない。おとよは思い出したように洗い始める。格好のよい肩に何かしらぬ海老色の襷をかけ、白地の手拭を日よけにかぶった、顋のあたりの美しさ。美しい人の憂えてる顔はかわいそうでたまらないものである。
「おとよさんおとよさん」
呼ぶのは嫂お千代だ。おとよは返辞をしない。しないのではない、できないのだ。何の用で呼ぶかという事は解ってるからである。
「おとよさん、おとッつさんが呼んでいますよ」
枝折戸の近くまで来てお千代は呼ぶ。
「ハイ」
おとよは押し出したような声でようやくのこと返辞をした。十日ばかり以前から今日あることは判っているから充分の覚悟はしているものの、今さらに腹の煮え切る思いがする。
「さあおとよさん、一緒にゆきましょう」