Classici giapponesi con furigana
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はまぎく
野菊の墓
伊藤 左千夫
Leggi 野菊の墓 (はまぎく) di 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.907 caratteri · 29 schermate
其に来て見れば、お繁さんが居ないのだから……。お繁さんは結婚したのだろう、どんな人と結婚したか。お繁さんに不足のない様な人は無造作にはあるまい。岡村に一つ聞いて見ようか、いや聞くまい、明日は早々お暇としよう……。
いつしか疲れを覚えてとろとろとしたと思うと、さすがに田舎だ、町ながら暁を告る鶏の声がそちこちに聞える。あ鶏が鳴くわいと思ったと思うと、其のままぐっすり寝入って、眼の覚めた時は、九時を過ぎている。朝日が母屋の上からさしていて、雨戸を開けたらかっと眼のくらむ程明かった。
これから後のことを書くのは、予は不快に堪えない。しかし書かねば此文章のまとまりがつかぬ、いやでも書かねばならない。予は自分で雨戸をくり、自分で寝具を片づけ、ぼんやり障子の蔭に坐して庭を眺めていた。岡村は母屋の縁先に手を挙げたり足を動かしたりして運動をやって居る。小女が手水を持ってきてくれた。岡村は運動も止めて家の者と話をして居るが、予の方へ出てくる様子もない。勿論茶も出さない。お繁さんの居ない事はもはや疑うべき余地はないのであった。
昨夜からの様子で冷遇は覚悟していても、さすが手持無沙汰な事夥しい、予も此年をしてこんな経験は初めてであるから、まごつかざるを得ない訳だ。