Classici giapponesi con furigana
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のはぎ
野萩
久生 十蘭
Leggi 野萩 (のはぎ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.480 caratteri · 21 schermate
杜松は下眼にうつむいて、
「母はマルセーユからサン・レモに帰る途中、車といっしょに崖から落ちて、亡くなりましたの」
「まあ、なんということでしょう……元日のひるごろ、エッフェル塔の下を車でお通りになるのをお見かけしましたが、すると、それが……」
杜松は眼を見はって、
「母は、その年の、十二月三十日の午後に、亡くなりましたんです」
安は、なにげないふうで、チラと滋子の顔を見ると、茶碗を袱紗のうえにかえし、両手を膝において、しずまりかえってしまった。
女中がまた電話をいいにきた。滋子が電話へ出て、しばらくして帰ってくると、杜松がいない。
「杜松さんは」
「庭を見るって……ほら、あそこに」
なるほど、池の汀の萩の間に、うらうらとした杜松の後姿が見えていた。
滋子は、そこへ坐りこむと、血の気をなくした顔に、なんともいいようのない薄笑いをうかべながら、
「あなたのおっしゃるとおりだったわ」
身体を支えるように、右手を畳について、
「あなたは、ちゃんと見ぬいていらしたんですから、驚きはなさらないでしょう……ね、驚かないでちょうだい。伊作、通訳になって、いまの船で、仏印へ発ったんですってよ。