Classici giapponesi con furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Leggi 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.957 caratteri · 31 schermate
額部が、汗に冷たく、盲目のように、空に両手を泳がせて、部屋の真ん中に立った。
おこうの顔も、米のように、白く変っていた。いま何よりも惣平次の恐れている、いつものおこうのようでない表情が、眉から眼の間に漂って、すっかり、相違いがしていた。
「願いなさい!」
強い声だ。おこうが、命令したのだ。藤吉もわれ知らず起って、炉の火の投げる光野のなかへ、はいって来ていた。
「ばかばかしい――。」
惣平次が、呻くと、おこうは、蒼白く笑って、
「お前さんこそ、そのばかばかしいことで、庄太郎を殺したんじゃないか。お前さんが、百両の代に殺した庄吉を、生き返らせるんですよ。さ、願いなさい!」
竜手様を持った惣平次の右手が、高く上がった。
「どうぞ、庄太郎が生きかえって来ますように――。」
「今すぐ!」
「今すぐ!」
竜手様は、畳へ落ちて、小さくもんどりを打った。それを見つめながら、惣平次も、気が抜けたように、べたんと坐っていた。
おこうは、異様に燃える眼を、土間の戸口へ据えて、男のように、立ちはだかったままだった。
三人を包んで、深夜の静寂が、ひしめいた。
つと、おこうが、しっかりした足取りで、部屋を横切った。