Classici giapponesi con furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Leggi 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.957 caratteri · 31 schermate
「鼠だ。」
戸を叩く音が、高くなった。
「庄太郎です! 庄公が来た、おう! 庄公が来た。」
おこうが、叫んで、跣足で、土間へ駈け下りた。
「おうお、庄太かい。いま開けるよ。今あけるよ。」
割れるように戸を叩く音が、家じゅうに響いた。すると、惣平次は、その怪しい場面が、たまらなくなって来たのだ。頭部を砕いた庄太郎が、墓へ埋めたままの姿で、いまここへはいって来ようとしている、竜手様に呼ばれて――。惣平次は、わが子ながら、その妖怪庄太郎の帰宅が、恨めしかった。厭わしかった。入れてはならない。そんな気がして、また、藤吉を見やると、藤吉の視線も、いつになく戦いて、同じ意味を返事して来た。
おこうの手が、戸にかかって、がたぴし開こうとしている。そとに立って、戸を叩いている「物」の、白い着衣――経帷子が風にひらひらして、見えるのだ。惣平次は、一直線に土間へ跳んで、おこうを押し退けようとした。が、おこうが、「何をするの! 寒いお墓から来たんじゃないか。五本松の浄巌寺から――庄太郎なんだよ! 庄太が来てるんですよ!」
戸にしがみついて、また、一、二寸引き開けた。同時に、どんと一つ、戸外から、大きく戸が叩かれた。