Classici giapponesi con furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Leggi 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.598 caratteri · 26 schermate
犯人の眼星は――?
雨がすべての跡を消して、軒下の模様からは何ものも掴めなかった。八丁堀合点長屋を前に挑みかかるようなこの兇状、藤吉、自身の名に対しても心から犯人を憎いと思った。己れ、挙げずにおかいでか――決意が、深い皺となって釘抜親分の額部を刻んだ。潜り潜って真相の底へいたるのが、藤吉の役目でもあり、また興でもある。今度とてぬかってなろうか、藤吉、石のように口を噤んで、歩を拾った。
裏の染場、その蔭に空地、向うに一棟、小さな物置場が建っている。
審べあぐみ、廻り廻ってこの小屋へ来た藤吉、年久しく使いもしないと見えて朽ちた板戸に赤錆びた錠が下りている。開きそうもない。が、何も試み――と手を掛けると、不思議や、錠は案山子、するするとひらいた。
「勘、きな臭えぞ。」
「さては、火元が近えかな。」
踏み込んだ二人の鼻を、埃の気がむっと打つ。見まわす土間、狭いから一眼だ。古い道具やら空箱の類が積んである奥に、小窓を洩れる薄陽の縞を受けて二つ並んだ染料の大甕、何を思ったか藤吉、転がるように走り寄って覗き込んだ。
甕の底に俵や菰が敷いてある。撥ね退けるとなにやらばらばらと飛び出た。