Classici giapponesi con furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Leggi 銀座復興 他三篇 (いさん) di 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 40.579 caratteri · 82 schermate
月はまだまんまるく、高い処に澄んでいるのに、空の半分は暗くなって、なかなか雨は止まなかった。
「変な天気ですねえ、気味が悪いわ。」
「明日が二百十日ですか。」
「いいえ、あさってでしょ。」
葭簀の隙間から落ちる雨だれに身をすくめながら、二人は別々の心持で、不思議なその晩の景色を見て立っていた。
不意に、目の前の砂浜を手を引合って駆けて行く男女の姿が見えた。頭から降りそそぐ雨を避ける場所がないので女は軽い叫声をあげながら、男の力に引擦られて行ったが、間もなく大きな漁船のかげにかくれて見えなくなった。
「今の、一郎さんでしょ。」
養子にそう云われるまでもなく、それが一郎と、その友達の岡部の妹である事は澤も認めた。何か大きな事件でも目撃したような気持で胸がどきどきして、返事も出来なかった。
月はしばしば雲にかくれたり、又未練らしく顔を出したが、雨はなかなか止まなかった。頭から肩へかけて、二人ともぐっしょり濡れてしまった。養子の横顔を澤はいつにも増して艶々しく思った。
「養子さん。」
非常な努力で、澤が呼びかけた声は無慙に震えていた。
「僕は真面目に貴女に聴いて頂きたい事があるんですが……」