Classici giapponesi con furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Leggi 錦木 (にしきぎ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.481 caratteri · 103 schermate
乳母は幾度も幾度も口をすくしてすすめると、
「私はどんなことがあってもこの家は動かない。私は死ぬ時にはあそこの此の上なく悲しくこの上なくなさけない思出をのこした椽に臥れて死ぬのだ、私は早くその時の来ることをねがって居る」
これだけ云ったきりあと幾度すすめても幾度さとしても同じであった。乳母はしかたなしにそのことを山の手の家に云ってやった。母君は「それでは気の向いた時に帰る様に」と云って来たので少し安心して光君が自分から帰ろうと云い出す日を待って居た。その月も末になった頃、女君が山の手の家に帰ったと云うのをきいて急に里心のついた光君はその翌日すぐ車を仕たててあわてた様に山の手の家に帰って仕舞われた。一時に美くしい二人の主を失った家は元の様にあけても暮れても戸は占められて留守の老夫婦がその大きな家の主であった。
(十)
山の手の家に帰った光君は気抜けのした様にだまって人に顔を見られるのをいとって居た。たびたび西の対の母君のところから見舞の手紙が来ても見たきりで三度に一度ほか返事はしなかった。紅や乳母以外の人には一言も身の淋しさや悲しさを云わなかった。