Classici giapponesi con furigana
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かぎ
鍵
谷崎 潤一郎
Leggi 鍵 (かぎ) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 102.182 caratteri · 200 schermate
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………いつもの時刻に敏子が去り、婆やが去る。十時に病人の鼾が始まる。十一時に庭に足音が聞える。………
四月二十三日。………発病以来今日で一週間である。午前九時、朝食後、小池さんが膳を台所へ下げに行き、私と二人きりになった隙を見て病人が唇を動かす。にーき、にーき、と云っている。昨日の、びーふーてーき、に比べて今日はよほど発音がしっかりしている。にーき、にーき、―――日記のことが気にかかるのであるらしい。「日記をお附けになりたいの? でもまだ無理よ」と云うと、「ちがう」と云って首を振る。「違うの? 日記のことと違うの?」と云うと、「お前の日記―――」と云う。「私の日記?」と云うと、頷いて、「お前は―――お前は日記を―――どうしている?―――」と云う。「私は昔から日記なんか附けていません、そんなこと、あなた知ってはるやありませんか」と、私はわざと意地悪く空とぼけてやる。すると口辺に力のない薄笑いを浮かべて、「あゝ、そうだったか、分ったよ」という風に頷いている。病人が微かながらも笑顔を見せたのは始めてであるが、ちょっと意味の分らない、謎のような笑いである。