Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

かぎ

鍵

谷崎 潤一郎

Leggi 鍵 (かぎ) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 102.182 caratteri · 200 schermate

Aozora Bunko

「音もなく」というのは、私が主観的にそう感じたので、夫は多分用便をする以外に他意はなかったのであろう。夫としては足音を忍ばしたわけではなく、全く普通の歩き方で階段を下りて来たのを、たまたま私が注意を外らしていたために聞くべき音を聞き損ったのであろう。とにかく私は夫が階段を下り切った時に始めて足音に心づいた。私は食卓に靠れて書いていたのだが、慌てて日記帳と矢立(私はこういう場合に備えて硯を用いず、矢立を用いている。それは父の遺品で、唐木で作った、中国製のものらしい骨董的価値のある矢立である)を卓の下に隠したので、現場は見られないで済んだが、帳面を慌てて隠す時に雁皮の紙を揉みくしゃにしたので、ひょっとしたら、あの紙に特有なぴらぴらした音が聞えはしなかったかと思う。いや、聞えたに違いないと思う。そして、あの音を聞けば雁皮を想像するに違いないし、そうすればそれを私が何の目的で使っているかを、推知したのではあるまいかと思う。私は今後用心しなければいけないが、夫に日記帳の存在を嗅ぎつかれたとすれば、どうしたらよいか。今さら隠し場所を変えたところで、この狭い室内のどこへ隠しても発見されずに済むはずはない。